早起きは三文の徳



夜更かし型の私には早起きは難しいのです。海外の学会の準備は、夜中にビデオ編集など行っており、出来上がるまでやると、夜のしじまに朝日が差し込むまでスタジオにいることとなります。ビデオ編集室は研究室のあるSTビル内にあります。朝6時ごろに終了して帰宅しようと裏玄関に向かうと、その前の警備室での仮眠から覚めて出てきた警備員から、『おはようございます。早いですね。』と声を掛けられます。私は、内心、”おそようございますだよ。”と、思いますが、面倒なので、同じく『おはようございます。』と返答します。でも、朝の空気は都会のど真ん中でも、ひんやりとすがすがしい感じがするものです。
写真は、よく行くドイツでの病院で、網膜硝子体手術では世界一と言われるエッカート医師と撮ったショットです。彼の病院はヨーロッパ中から難しい患者が来院して、私も難しい症例の手術の勉強もできます。白内障手術では多くの新しいことを今まで私が発表しています。エッカート医師は白内障手術もしますので、白内障の世界では世界で知られた私のこともよく知っており、自分の得意な網膜硝子体手術の色々なヒントを喜んで提供してくれるのです。網膜硝子体はドイツが世界で最も進んでいます。深作眼科ではドイツの専門家が使う器具をドイツから輸入して、エッカート眼科に負けない設備と技術を日本でも実現しています。
欧米での病院は開始がとても早く、彼も7時半には手術を開始します。私もドイツでは同じく朝が暗いうちから起き出して、病院に向かいます。写真の建物は、いつもいるホテルの部屋から撮った風景です。2月のドイツはとても寒く、空もどんよりと曇っています。さすがに、北の国だなと思います。私の地元の横浜の冬は、寒いけれども雲ひとつ無い高い天空が冬の風景です。
苦手な朝早くから、手術室に入り、多くの特に難しい網膜硝子体症例を次々とこなしていくと、身体がどんどんと目覚めて反応していくことが分かります。日本では治療不可能と思われている多くの難治症例を直して行きます。
例えば、網膜血管閉塞症ですが、日本ではすぐにレーザー網膜光凝固術を行います。しかし、米国の論文でも、これは効果が無いか、かえって悪い場合も多いことが以前から報告されています。これに対して、抗VEGF抗体のアバスチンなどを使用しながら、硝子体手術などで完全に視力回復ができることが多いのです。日本では少数派のような誤解を招きかねませんが、我々のしていることは世界の最先端で、世界の先進的な眼科外科医が目指している、まさに眼科の王道なのです。
朝早くおきて、仕事に勉強に頑張っていると、一日の時間が能率良く使えることが分かってきます。当地のフランクフルトの市立美術館など、水曜日や金曜日など夜中まで開館しているのです。仕事を終えて、夕食に街中に出ると、食後の美術鑑賞やコンサートなどが迎えてくれます。日本の美術館も週の水曜日と金曜日は夜間の開館を考えても良いのではないでしょうか。夜の帳がおりるとともに、ライトの下に浮かび上がる美術品が神秘的に語りかけるのも、夜の魔法のような気がします。