シカゴの国際眼科学会で緑内障、偽落屑性症候群の話題

 シカゴの国際眼科学会で興味深い話題の一つ。日本ではあまり眼科医の注目が深くないのですが、世界では非常に注目されている話題です。
 偽落屑性症候群(もしくは落屑性症候群)と呼ばれる異常タンパンク質が水晶体に付着して、散瞳が悪いので、気づかれる病気があります。
 僕ら眼科外科医はこれに難渋することが多くあります。水晶体を支えるチン小帯がボロボロであり、虹彩の色素が抜けていて手術中に不安定だし、炎症も起こしやすく、散瞳も悪く、かつ手術中に小瞳孔となることが多いのです。
 こんな白内障手術が難しいので、偽落屑性症候群の難しい白内障手術をして失敗したり難しいと聞いているような他の多くの眼科医が、分かっていても手を付けずに放置して、ますます進行してチン小帯が広く切れていて水晶体が脱臼したり、極端な小瞳孔だったり、水晶体がやや前に出てくるような症例では重症の緑内障になっていて放置されてます。
 こんな重症の偽落屑性症候群(落屑性症候群も同じ。偽でないからこう言うようになったが、いまだに言い方は半々)の白内障緑内障を併発している患者が毎日のように深作眼科に来院します。
 この為に今日のアメリカ眼科学会(AAO, American Academy of Ophthalmology)での緑内障セッションでの話題ですが、非常に面白かったのです。

 写真は異常蛋白のついているチン小帯や白内障が最初のいくつかのカラー写真です。ついで、なぜこの落屑と呼ぶタンパク質が緑内障を起こすのか。

電子顕微鏡で見るとわかります。目の中の水が静脈へと流れる経路は線維柱帯からシュレム管という管を通ります。落屑の原因である異常蛋白質がシュレム管の中に溜まり、水の流れを悪くしているのです。

 さらに次のスライドは日常での問題ですが、コーヒーのようなカフェインをとると悪化することが示唆されています。モルモン教徒はコーヒーが禁止されています。僕もコーヒーを飲みませんが、理由は苦いからというだけですが、偽落屑性症候群の怖さを知っているので、飲まなくて良かったですね。結構し好品で、タバコはもちろん論外ですが、コーヒーも結構カフェインが毒性があるんですね。
 さらに興味深いのは、この落屑が他の部位の血管にもたまることから、偽落屑性(落屑性)症候群という目の症状がある人は、同じ原因でアルツハイマー病にかかりやすいことが分かってきました。さらにそのほかの血管性の病気である循環器障害や糖尿病など、落屑が他の血管などの内壁に沈着するようです。
 またこれのかかる遺伝子が発見されています。患者は非常に多くて年とともに多くなり、70歳以上では非常に多くの方がかかっているのを、私の白内障手術患者でも毎日多いので実感しています。偽落屑性症候群(落屑性症候群)での白内障手術や緑内障手術は、かなりの上級眼科外科医に依頼しないと成功しませんので、覚えておいてください。
 糖尿病と同じように、他の分野の疾患だと思われていたアルツハイマー病なども、我々のような眼科外科医が発見することが多くなりそうです。