再び国際眼科学会で受賞。世界最多の20回の栄誉


 アメリカのニューオリンズで開かれていた、国際眼科学会にて、再びその眼科手術について世界最高の評価が下りました。今回で20回目の記念すべき受賞です。もちろん世界最多の受賞数です。およそ当院の眼科手術技術は世界でもずば抜けて進んだ位置にいます。
 深作眼科が、白内障緑内障網膜剥離の手術技術では世界一であることは、世界中の患者と医師が良く知っています。この為に、世界の多くの医師はその技術を習いたがり、世界中の患者はその卓越した技術の手術を受けたくて、わざわざ海外から来日する。横浜本院の病院と六本木院の手術センターともに世界中から患者さんが集まります。
 このような技術レベルを維持するためにも、毎年春に、アメリカで行われる国際眼科学会に挑戦することは大切なのです。今までに、1990年から27年間で20回の受賞となりました。もっとも、学会の途中3年間は私自身が審査員を務めたこともあり、実質は24年間で20回の受賞です。審査員をやっていると、やはり自分が大御所になって評論するよりも、挑戦者として新しい手術などを教えることが重要だと思っています。この20回受賞は世界最多であるだけでなく非常な高率での受賞です。毎回テーマを変えて、その中で常に最高度の洗練された手術を見せていることが、多くの受賞となっています。今回は受賞20回であり節目の年です。
 今年のテーマは緑内障手術です。多くの日本人が緑内障は手術ができないと思っています。これは非常識な考えが常識になっている「非常識の常識」ですね。
それでは、この日本人の非常識についてお話ししましょう。
緑内障と診断された。薬が良くなった。でも治せないと言われた。でもほんとは治せる?』
 緑内障は日本では常に失明の第一位原因を競っているような、眼科の外来ではよく診る病気です。65歳以上の高齢者では、白内障と同じく多くの方がかかります。また、お年寄りだけではなく、若くても緑内障はあり、少ないですが、かなりの子供もかかります。
ある程度の進行性であり、すでに障害が強くなっている患者さんに、「緑内障の手術を予定しましょう」と告げますと、たいていの日本の患者さんは、少々驚いたような顔をします。そして、「緑内障って手術ができるんですか?よその病院で良い薬があるから大丈夫と言われたけど、どんどん進んで悪くなってしまったんですよ。ほんとに手術なんてできるなんて知らなかった。」と懸念の表情で私に聞き返します。私は、ああまたかと微笑み返し、「薬は緑内障の進行を抑える効果はあります。しかし、ある程度進行すると、より眼圧を下げないと進行を抑えられません。薬はしょせん限界があります。あなたの緑内障の悪化を抑えるには手術しかないんです。私たちが開発した緑内障手術を欧米の眼科医が採用して、緑内障の進行を抑えられることは実証してます。」と述べると、こんどは緊張が取れた安堵の表情を浮かべます。「ああ良かった。お友達に紹介されて救われた。他の病院のように、いずれ失明するからと、また宣告されると思って不安でした。」と述べ「緑内障が手術できるって、早く知りたかった。」と、ぽつっとつぶやくのです。
これは決して特殊な緑内障の患者さんの反応ではありません。非常に多くの患者の「非常識な常識」なのです。この「非常識」とは「緑内障は治せない」という間違った知識であり、「常識」とはこの間違った情報が日本中では「ほぼ共通した認識」だからです。
 今回のニューオリンズでの学会には、新しい緑内障手術を提示し、非常に多くの眼科外科医の関心を集めました。個人的にこのような方法を習いたかったと、世界中の眼科医から何度も話しかけられました。


緑内障は理解しにくい面があるのは、患者だけでなく眼科医も充分には理解していない方が多いのです。そこで、もう一つ述べます。

『非常識な常識』のもう一つ。

緑内障で『正常眼圧』と言うのがあり、日本の眼科医は、この正常眼圧10mmHg から21mmHgまでを正常域と言います。
 眼圧はもともとドイツ人の眼を使って、圧平眼圧計という、外から押した力を角膜の平べったくなる程度を見て目の圧力を測る機械が出来ています。
ドイツ人の眼は角膜が600ミクロンほどに厚いので、眼圧がやや高く出ます。一方で日本人の角膜は550ミクロンほどで、やや低い眼圧で押してもドイツ人の角膜と同じだけ角膜が歪みます。つまり、日本人の方が歪みが同じなら、眼圧は低いのです。つまり、日本人の正常眼圧はもっとずっと低いのです。さらに、中には角膜が400ミクロン代の方もいます。この人たちはいつも眼圧が見かけ上かなり低いのです。つまり、正常眼圧などは角膜の厚みにより変動し、特に日本人は角膜が薄いので、ドイツ人の使った正常眼圧値の10から21mmHgは使えないのです。
『正常眼圧緑内障』と言う言葉があります。眼圧が正常なのに緑内障を起こしている患者さんです。多治見という岐阜県の地方都市で、緑内障の長期調査が行われました。そして、緑内障の患者の90%以上の眼圧が正常眼圧だったのです。つまり、その方達は、眼科で『眼圧が正常』だから心配いらないと言われ続けていたのに、『緑内障』になったのです。
 実は世界では、正常眼圧、などという言い方はもはや死語なのです。眼圧は経過を見るのに重要です。しかし、『眼圧が正常範囲にあるので問題』、とほとんどの日本の眼科医がいうのはまさに、『非違常識』な認識です。緑内障の原因はハッキリとはしていないのですが、眼圧が重要な要素ではあります。その『眼圧は角膜の厚みによって変わるので、その補正をしなくてはならない』という『常識』が日本の患者と日本の眼科医に無いのは、「非常識の常識」です。

 いずれにしろ、日本では不治の病のごとく扱われる緑内障は、古典的な方法で治療しようとするからです。また、一つだけでなくいくつもの手術手技を知っていることが大事なのです。今回の受賞は出来るだけ手術でも眼の組織に傷害を与えない極小切開の手術です。この方法なら、眼球への障害はまず無く、手術後の眼圧も低めに安定して、患者さんの視機能を守れます。