2009年度、アメリカ眼科アカデミー学会受賞。

先般、アメリカのサンフランシスコで行われた世界最大で権威のあるアメリカアカデミー眼科学会AAO(American Academy of Ophthalmology)に参加した。
私は日本人で初めてのアカデミー眼科学会のアチーブメントオーナー会員で、これは今までにアカデミー会員として、学会の講演や受賞などの実績を表彰された、成果を成し遂げた(アチーブメント)名誉ある(オーナー)会員のことです。
今回また、白内障の新しい手術手技を紹介した手術ビデオがベストビデオとして表彰されました。春のASCRSと秋のAAOが世界二大学会ですが、常に世界最高の技術を求めている深作眼科の姿勢が、世界の晴れ舞台で毎年世界の第一位の成果として表彰されるのは、患者さんと共に喜びを分かち合いたいと思います。

世界の中で活躍するようになってから、やはり世界で活躍する多くの方々との知己を得ました。日本人も最近は世界の大舞台で活躍されている方も増えつつあります。この写真はそんな日本人の一人で、世界遺産選定で有名な国連の組織のユネスコの事務長である松浦さんがいます。松浦さんはフランス大使として長年勤務した後、ユネスコ事務長に選ばれ、世界遺産選定でも尽力し、特に無形文化財世界遺産に取り入れたり、文化遺跡の保存に功績があります。
ユネスコには多くの美術品があります。知人の安藤忠雄さんはユネスコ本部に瞑想の間を設計されました。しかし、ユネスコには簡単に入れないので、松浦さんに見学をお願いしました。朝、パリのホテルで待つと、松浦さんが送られたユネスコの事務長専用車が迎えに来ました。ショーファーつきの車で移動の途中から雰囲気があります。
写真は、パリのユネスコ本部の最上階にあるレストラン奥のパーティールームに飾ってある絵画の前で、松浦さんの奥様と撮った写真です。松浦さんの奥様も大変博識であり、ユネスコの多くの美術品をご案内していただけました。
私が入選出品した、独立美術協会の大先輩の奥谷博さんもこのユネスコ本部で個展をなさったそうです。先日、奥谷さんご夫妻が、私のところにいらしたときにユネスコの個展の様子や松浦さんのことなどをお話してくれました。国際機関や美術の分野でも国際的に活躍する日本人が増えてきて、分野は違えども誇らしい気持ちに成れます。ハーグで小和田さんとお会いして、お話しながら日本に帰ったら教育者として活躍されるだろうと思いましたが、さらに国際裁判所所長に選ばれて延期になりましたが、今後の世界はますます国際化が進み、日本人も国内の中だけの感覚ではすまなくなりそうです。
医学は特に、国際化が進み、医学で最も難しい眼科外科は世界の最先端で活躍するには、国内だけの視線では常に10年は遅れてしまいます。世界ではもはや行わない方法が、日本では未だに行われ、術後視力がよく回復しない例は多くあります。医学の共通語は英語ですが、こと医学に関しては英語で学習すべきであり、これができないと世界の学会で討論に入れず、最新の知見を得られず、日本人が馬鹿にされる原因ともなっています。


写真のように、ユネスコは芸術の都パリにあるために、窓からの風景も芸術の香りがします。エッフェル塔や近衛兵の練兵所などユネスコ本部の近隣が見られます。

また、ユネスコは芸術家が多くの作品を寄贈しており、一般公開はしていないものの、芸術作品がそこら中にあります。ところが管理が悪く、とんでもないところに名作が置かれています。写真はヘンリムーアの彫刻の傑作ですが、ビルとビルの間の狭いスペースに放置されています。ピカソの大壁画も掃除の道具置き場に描かれており、それを見たピカソが怒ってサインを拒否したそうですのでサイン無しです。ミロの大壁画も妙なところに置いてあり、まるで粗大ごみのようです。

ユネスコ本部ビルの中庭にお目当ての安藤忠雄さん設計の瞑想の間があります。これはイサム野口の日本庭園風の庭の隣にあります。日本人の一口募金で建立されました。この写真は内部の様子です。天井の周囲から注ぐ光が気持ちを瞑想へと誘います。安藤さんのこの天井脇から光が降り注ぐ形は、最も得意とする方法です。

ユネスコのような大きな組織では、せっかくの美術作品も結構粗雑に扱われていてもったいない限りです。他日、私の好きなルオーのアトリエを訪問しました。このアトリエも公開されていません。吉井さんが日本のルオーをほとんど扱っていますが、吉井さんに同行してルオーのアトリエに訪問できました。駅の見渡せる天井の高いアパートメントを生涯アトリエとして使い、いまはそこが孫のルオーさんらによって運営されるルオー管理財団の事務所ともなっています。一緒の方が孫のルオーさんで、もとパイロットの方です、退職後にルオー財団の理事長として管理をしています。非常に温厚な方で、ルオーの描いた宗教画に相応しいような人格者と感じました。ルオーは吉井さんのおかげで身近に感じる作家の一人です。生前のままに残されたアトリエで、分厚く残った絵の具が盛り上がっているパレットや絵の具で固まった太い絵筆を立てかけてあるのを見ると、今にもルオー本人がそこに出てくるような錯覚を覚えました。画家としての私の気持ちに強く感動を抱かせる空間でした。