2008年度ASCRSアメリカ白内障屈折矯正手術学会制覇


白内障手術、近視矯正、老眼矯正、緑内障手術などでは世界最高の眼科学会がアメリカのシカゴで4月3日から9日まで開催されました。
僕にとっても一年で最も重要な学会です。特に世界中の代表的な眼科外科医がその技術やアイデアを競う、眼科では最も歴史があり最も権威のあるフィルム、フェスティバルが開催されます。
ことしの、コンテストに僕は、最も重要な白内障手術の新しい技術で挑戦しました。
この技術は審査員の熱狂的な支持を受け、最も優れた研究と評価されました。写真の一枚目は、授賞式での受賞者スピーチの時です。映画のアカデミー賞と同様なフルバンドが入り、数千名の聴衆のなかで予告無く表彰者が選ばれます。トロフィーもアカデミー賞と同様にオスカーと呼ばれます。1990年に最初の受賞して以来、審査員を務めた時を除いて、18年間で17回目の受賞となりました。もちろん世界最多ですが、すべての分野で世界最高のレベルにあることを、世界最高権威の米国眼科学会が認めたのです。


シカゴは多くの名建築物が建っていることで有名です。また、少し郊外ですが、オークという町に世界三大建築家といわれた、ライトの設計した建築住居群とライトの住居とスタジオがあります。
シカゴ中心部にはスパイダーマンの映画などで有名なループという電車が高層ビルの中を走っています。このループから郊外に延びるグリーン線でオークに行けます。中心街は普通の人種構成ですが、郊外に行くにつれて、車内の乗客がほとんど黒人になり、建物の窓ガラスが割れて紙で塞いだようなスラムのような風景が広がってきます。黒人の問題が多かった、ニューヨークの地下鉄でも味わったことが無く、丁度南アフリカヨハネスブルグのスラム街ソエトに似ています。南アフリカ初の黒人大統領のマンデラの生家はここにあり訪ねたことがありますが、なかなか怖そうな所でした。これはなかなか興味深い、普段見ることの無い、アメリカの病根を見る気がします。オバマが大統領候補となっていますが、マンデラのような熱気があれば、まんざら夢物語ではありません。しかし、南アフリカの白人はおとなしいヨーロッパ系のオランダ系が多いので、対立の不安要因は少ないのです。アメリカの白人はイギリス系が主流であり、彼らの無神経ともいえる無邪気な優越感は新たなる対立を生むかもしれません。
電車が、オーク駅に近づくと、急に高級住宅街になるのです。この変化も嘘のようですが、オークはほとんどが白人の町で、途中の区域とみごとに住み分けされています。オーク駅近くにライト設計のユニティーテンプルがあります。写真はこの中の説教壇前です。この建物は光をふんだんに取り入れて、建築費を抑えるためにコンクリートを効果的に使った建物です。開放感と外の道路側からの視線を遮ることを同時にかなえる方法です。このコピーは日本の建築でも良く見られます。今回ライトの多くの建築を見て、彼の自宅での建築方法の変遷を見ました。日本でテレビなどで天才建築家と紹介されていた日本人のアイデアは、実はとっくにライトが実現していて、これで日本のは単なるコピーだと思ったしだいです。時間が許せば自分ですべてを設計してライトを超えるものを作りたいとさえ思いました。自分に向いている分野がまだほかにもあるもので、この分野でも世界一に慣れたかもしれないと感じさせるほど、建物から多くのことを自然に感じられました。


アメリカの学会に行くと、歴史上でも高名な方とお付き合いが出来ます。この方は、近代的な超音波白内障手術の父とも言うべき人で、クラッツ先生です。私のことを良く覚えていて、どこでも声をかけてきます。僕は日本では実にまれですが、学生時代から開発者のケルマンの論文に触発され、日本ではほとんどやる人のいなかった、超音波白内障手術を医師になったすぐからアメリカで習得しています。ですから、今年の最大の白内障手術方法の新たなる技術で審査員の絶賛を浴び、第一位との評価を得たことは、眼科の本道で常に先頭を切っている喜びと使命感を感じます。


次の写真は、アメリカ眼科学会の会長であり、私の師であると同時に今や最高の友でもあります、ソルントン先生です。彼はハリウッドスターのような容姿とユーモアに富んだスピーチで、古き良きアメリカ人の代表者のような存在です。いまや、アメリカンドリームは怪しげなところもありますが、やはり日本のスケールとは全く違い、僕自身の感性に良く合います。

最後の写真は、今回のコンテストの主任審査員とコンテスト会長です。もう17回目の受賞ですし、僕も審査員をやっていましたので、気の合う仲間のような感じです。
毎年、眼科の進歩に挑戦し、先頭を走り、競争するのはけっこう大変です。しかし、人は夢を失うときに老い、夢に向かっている時は常に青春の輝きの中にあります。何よりも、私に眼の病気で助けを求めて、日本国中から来院する患者を救う使命感をもつ者として、常に世界最高の技術と問題意識を持つことは、私の喜びであり、大儀です。