Yes, we can.


以前に、バラクオバマ民主党候補がひょっとしたら次期米国大統領にになるかもしれないと書きました。最近、このオバマが気になり、彼の演説を出来るだけ聞きます。彼は対立候補と違って、相手を中傷することをせず、前向きな姿勢です。彼は、希望と結束(hope and unity)を良く語り、変革(Change)を前面に出し、そう、我々はできるんだ。(Yes ,we can)と伝えます。
今、医療危機が叫ばれて久しくなります。特に救急患者さんをめぐるたらいまわしとか、産科施設の閉鎖が増えたり、必要なリハビリが続けられないなどです。我々の眼科でも、本当に世界標準の治療を保険が認めなかったり、患者に必要な患者本位の治療をすると赤字になってしまうような多くの矛盾を抱えていたりします。
オバマの前向きな言い方の、そう、我々は出来る、解決できるんだ、との前向きな言い方や彼の理性的な態度は素晴らしいものです。日本の政治家の裏取引、汚職など信頼できない態度で、医療福祉政策を切り捨てようとするのを見せ付けられている、日本の有権者にはうらやましい限りです。
オバマはケニヤからの黒人留学生の父と、アメリカの田舎のカンザス州出身の白人女性との間にハワイで生まれ、途中一時インドネシアに居ましたが、戻ってからは、プナホウ学園卒業まではハワイにいました。
私は、横浜生まれであり、いわゆる田舎がありません。その代わりになるのが、ハワイのような気がします。飛行機の窓から見える、写真のような小高い山の、ダイアモンドヘッドを見ると、田舎に帰ったようなほっとしたのんびりムードに入れます。気候も好きですが、ゆったりとした時間の動きは気分転換に良い場所です。
毎日、深作眼科の医師は、食事時間も充分に取れなく、トイレさえ満足に行けない状況で、朝から夜まで、診療と手術に過ごしています。
臨床力に優れる病院に患者さんが集まるのは当然です。しかし、以前よりも権利意識に目覚めた患者に対して、より忙しくなった優秀な医師が消耗しきってしまう状況が日本中で見られます。
日本は医療費にかけるお金が先進国中で最も少ない額です。今まで、高い医療レベルを安く上げられるように、医師の持つ使命感に頼り、医師に犠牲を強いていました。その使命感は医師だけでなく、伝統的にお医者様と呼ぶように、患者さんが医師に対して尊敬を充分払っていたことで、何とかバランスをとっていました。
ところが近年の、患者さんのある意味で間違った権利意識で、医師に尊敬で無く対抗するような言動を繰り返す人も増えました。これは、実態以上に危機的状況です。よくインフォームド、コンセントという、あらかじめ前もって治療や手術で起こりうる危険性について説明をして、患者さんが同意することの重要性がいわれます。我々もこれは非常に大切にしていて情報をかなり詳細に伝えます。
ただし、これは陽の明るいの部分だけでなく、影の部分というか、なぜこれがアメリカで導入されたかを考える必要があります。契約社会で訴訟が多いアメリカではお互いが直ぐに敵になりうるのです。これに対してインフォームド、コンセントは、既に説明したという契約上の説明条件として使われています。
伝統的な日本にあった、お互いを信頼して、最高のものを提供しようとしたり、信頼感の中で相手を中傷したり責めたりしないで、損得抜きで医師が患者の為に尽くして、患者は医師に感謝の気持ちを伝える世界の良さを再評価してみる必要があります。
患者の敵対的な可能性に心配する病院が、患者受け入れを拒否したりするのは、アメリカで起きている悲しい現実です。
世界最高の眼科医療を提供する最大限の努力をしている我々が充分時間をかけて、説明してからも他所でのセカンドオピニオンという方がいます。我々はあらゆる可能性を説明して、その中で最高の設備と技術で結果の予測もします。まさにファーストオピニオンの原意の、最高の意見、を述べています。患者さんがどうしようかと、迷っているなら分かります。しかし、長時間説明の後に信頼が充分でないかのような他所の意見を求めるのはよほど慎重な配慮に満ちた言い方でないと、最も大切な意見を紹介した我々の気持ちを排除しかねません。
我々は、全く損得抜きに、最新最高の設備に常に更新して、技術も最高のものを用意しています。ですから、もしも何らかの分野で充分できないことがあれば、他所のよりよい施設を紹介します。我々は常に本音で、隠し事も無く、誠心誠意を尽くして患者さんに対応しています。患者さんも、妙な悪い意味での現代風の風潮に惑わされずに、充分な尊重、尊敬の念を持って我々の努力に対応してください。お互いを尊重して大切にする世界こそ大切です。きっと出来るはずです。
オバマがYes, we can.(そうだ、我々にはできるんだ。)と言った確信は、医療を何とか理想に近づける努力をしている、私たち医師と患者双方の共通の願いと全く同じです。