明るいアメリカン


今日も、アメリカの大統領予備選の報道がありました。とくに民主党候補は激戦で、アフリカンアメリカンつまり黒人のオバマ候補と、女性のヒラリークリントン候補のどちらが勝ってもおかしくありません。驚くのは、初めは無名だったオバマ候補がカリスマ大統領だった故ケネディーに例えられていることです。どの世界でも、日本にもある、人種差別が劇的に変わりつつあるのかもしれません。世界は距離的にも精神的にも、ひとつの世界に向かって流れている現われかもしれません。
眼科外科医は世界的には医学部の中でも最も競争が激しくて、なかなか眼科手術のレジデントにはなれないのです。一般外科や内科などを終了した医師が待機しながら眼科外科医を目指します。アメリカで最も人気で最も難関な専門は眼科外科医です。医学部で、上位5%に入っていないとまず眼科外科医にはなれません。優秀な医師の競争が激しいために、アメリカの眼科医療レベルが常に高いのは納得できます。
競争が激しいアメリカの眼科では勉強熱心なユダヤ系が非常に多く、一方で黒人の眼科医は以前はめったにお目にかかりませんでした。一時期少数派を優遇する政策があり、黒人の医学部への優先入学があった頃もありました。
最近、アメリカの高級住宅地域での眼科手術センターに行きました。アメリカで2年ほど前からさかんになった、多焦点眼内レンズ移植手術の視察でもあるのですが、名前がローガン医師であり、以前の大統領レーガンがなぜか頭に浮かんでいました。ですから、眼科外科医が黒人の医師であることを知って少なからず驚いたものです。しかし、ローガン医師は写真のようにハンサムであるだけでなく、とても人懐っこく、人柄の良さが全面に現れていました。眼科外科医としての腕も秀逸で、さすがにアメリカの激烈な競争で勝ち残ってきただけはあります。彼の病院がある地域や、翌日訪れた高級住宅地域のビバリーヒルズの病院でも、白内障の手術患者の約半分は多焦点眼内レンズを選んでいることは驚きでした。
深作眼科は老眼の治療では世界をリードしてきましたが、多焦点眼内レンズ移植手術でも日本では最も早く始め、かつ多くの症例を経験しています。細心の注意を払った白内障手術で、完全に正円なCCCと呼ぶ前嚢の窓と、完全に中央に収まったレンズ位置、薄い皮質を完全に取り除いた美しいカプセルなどは、深作眼科の芸術といえる手術の完成度で得られる成果です。今日も何人も多焦点眼内レンズ移植後の患者さんを診ましたが、最も良い方は、白内障手術後に両眼とも裸眼で片方ずつの遠方視力が1.5であり、また裸眼の近方視力が両眼とも1.0づつ出ていました。患者さんは裸眼で遠くも近くもこれほど見えることに、大満足です。もちろん、全てがこれほど良いのではありませんが、最高の例にしても驚きの結果です。
日本では残念ながら日本独特の方法の混合治療禁止(ちなみに海外では混合治療などという妙な言い方は無く、最新の治療は一部を自費にしても従来からの手術は保険が利きます)の為、多焦点眼内レンズは自費手術となりますが、長い眼で見ればメガネを何回も作ることを考えれば、費用はさほど変わらないかもしれません。
ひょっとすると黒人初のオバマ候補がアメリカ大統領に選出されるかもしれません。世界はどんどん動いています。つねに前例主義のやり方を守り、新しいことに不寛容な日本は、いつのまにか世界から取り残される危険性を含んでいることに眼を見開く必要があります。