失われた世界



2008年3月3日
南アフリカの話を前回はしましたが、多くの方にとって南アフリカはイメージしにくい国でしょうか。しかし、次回のサッカーのワールドカップ南アフリカであることは知られています。ワールドカップを単独で開催できる国はかなりの大国であることが理解できます。南アフリカは一般のアフリカのイメージとは異なります。一昔前の豊かなアメリカにイメージが似ています。ただし、白人が800万人いるのですが、この白人の医師との交流がほとんどで、4000万人いるといわれる多くの黒人との交流はまだ限定的です。南アフリカは鉱物資源に恵まれて、広大な国土を持ち、非常に豊かな人々が多い国です。
写真は学会場のあった、サンシティーSunCityでの風景です。女子ゴルフのワールドカップが毎年開かれることでも知られています。第一回目に宮里藍らが頑張って優勝してからは、いまひとつの成績ですが、彼らがプレーするゲーリープレーヤーゴルフコースは、何回かプレーしましたが、独特の芝がきつくて、女子の力ではラフからは出すのがやっとでしょう。
ゲーリープレーヤーは、有名なゴルフのスターです。彼は、両眼の白内障手術の際に、多焦点眼内レンズを両眼に入れました。これは、深作眼科の多焦点眼内レンズの項目を見てください。ゲーリープレーヤーが紹介されていますが、彼は裸眼でゴルフをして、スコアカードも裸眼で見え、コンピューターも読書も裸眼でこなしています。
これは、イメージと思われるでしょう。しかし、現実に、深作眼科で既に施行した多焦点眼内レンズの患者さんの術後成績はとても満足できるものです。
ただし、多焦点レンズを多く経験するにつれて、この方法こそ、手術経験が豊富な深作眼科の為にあるような手技と感じました。白内障手術時のカプセルの前に窓を作ります。CCCという方法です。日本で最初にCCC開始したのは深作眼科で、1989年から、全例の白内障手術でCCCによる窓を作成しています。
CCCを、完全に正円でずれも無く真ん中に作成できる技術がとても重要です。もしも、ずれがありますと、だんだんとレンズの偏移が起きることがあります。この偏移は多焦点レンズには禁物です。レンズのずれがありますと、多焦点レンズでは返ってまずいことになり、遠くも近くも良くは見えなくなります。我々はさらに白内障手術も含めて、20年以上も世界の最先端の方法を経験しています。私自身、白内障で6万件以上の経験がありますが、その経験の集大成が、現在の多焦点眼内レンズ移植術と思っています。
写真は、SunCityのもうひとつのチャンピオンコースです。コースはよいのですが、どうしてこちらが選ばれなかったのかと思うに、ゴルフコースの中の池にこんな大きなクロコダイルという巨大なワニがいますので、女子の競技には向いてないのでしょう。
下の写真は、岩の間に閉じ込められた像が見られるようです。サンシティーはロストワールド(失われた世界)と言われています。昔の進んだ古代文明の都市が密林の間から忽然と姿を現したものと、物語性をコンセプトにしています。パレスホテルなど世界的に見ても、全てが素晴らしい快適なリゾート空間です。
南アフリカの最初の白人はオランダから来ました。彼らはまじめな農民で、南アフリカの肥沃な土地でプランテーション農場を展開したのです。その後、南アフリカで金銀、プラチナ、ダイアモンドなど貴重な資源がどんどんと発見され、開発されました。そうなると、歴史上の侵略の王者であるイギリスが黙っているわけがありません。ケープタウンに根拠地を作り、どんどんと内陸部に攻め入ったのです。オランダ系の白人はボーア人と呼ばれますが、イギリス人に攻められ、どんどんと内陸に移動し、彼らの国として今の首都のプレトリアに街を作りました。しかし、それでも金などを求めたイギリス人に追われ、ボーア戦争という対イギリスの戦争をして、敗北しました。その後、イギリスの植民地としての歴史を経て独立するわけです。このプレトリアの近くに大都市のヨハネスブルグがあります。いまでは観光地ですが、近くに大きな金鉱山があり中が見れます。
オランダを先祖に持つ白人の人々はいまだにオランダ語に近いアフリカーンスという現地語をしゃべります。プレトリアのいったいに住む白人はほとんどアフリカーンスをしゃべりますし、自分自身の意識はアフリカ人であり、オランダに親近感を持っています。一方でケープタウン近くの白人はイギリスからの侵略者の末裔であるのか英語の発音もイギリス語に近くアフリカーンスはしゃべれません。
黒人でもいくつもの部族があります。ズールー族が最も多いようですが、黒人同士の言葉はお互いに通じません。黒人が一枚岩では無く、互いに対抗している現実もあります。
南アフリカは、日本と色々な意味でかなり異なることが分かります。つまり、多民族国家で、資源が世界の中で有数の資源大国であることなどです。たまたま、縁があって南アフリカの眼科学会の永世名誉会員に選ばれましたが、南アフリカの良さは、実際に行ってみないとわからない奥深さを感じます。世界には実に多くの異なった世界があり、実に興味深いものです。