GOETHE、細川護煕、佐々木豊


幻冬舎発刊でGOETHE(ゲーテ)という雑誌がある。仕事と人生を楽しんだ文豪ゲーテに因んだ名前だという。10月号での眼科の多焦点眼内レンズ移植術について取材したいとの連絡があった。ついては患者さんで著名な方との対談をお願いしたいとあった。著名な方の患者さんは多いが、日ごろより敬愛する日本を代表する文化人である細川護熙さんにお願いした。近年特に陶芸作家などでの芸術家としてだけでなく、細川家18代当主で79代総理大臣などの経歴から文化や歴史についての著書も多く講演や取材で非常に多忙な方であるが、深作眼科の関係ならと快く引き受けていただけた。
ホテルオークラで会見場が設定されて、写真撮影や対談を行った。細川さんは知れば知るほど日本の文化人の奥深さを知るし、また細川家700年の血統が生んだ良い意味での貴種とはこういうものかと感じ入る。武家の頭領であるが同時に文化の庇護推進者の伝統を体現している。


細川さんは若々しいが、白内障による視力障害が通常の年齢変化に伴って起こってきた。白内障には誰でもなるので、皺のように当たり前の変化であるが、視力低下は生活の質を著しく低下させる。多くの人はまずは近所の眼科にかかり、そこから紹介で大学病院や総合病院に行く方が多いのではないか?そして、日本で通常行われる眼の上からの切開で白内障を取り除き、単焦点レンズを移植することとなる。手術後にメガネを合わせ、最大で0.8ぐらいの視力が出て、まあこんなものかと終わることとなる。しかし、細川さんの凄いところは、けっして軽はずみに病院を決めていない。まして、近くの眼科にとりあえずいって診てもらおうとはしない。細川さんの人脈を駆使して、日本でいやおそらく世界で最も良い病院はどこかと調べたはずである。手術を含む治療で大切なのは、どこで誰によって手術を受けることで、これに正しい判断を下すことが治療の99%である。つまり多くの患者は最も重要な誰に手術を受けるかという99%の治療をおろそかにしているのである。あとの1%は近くの病院とか、職員が親切とか本質にあまり関係が少ないことである。単純に言えば、眼科は外科の特殊な微細技術を持った超専門家であり、腕が全ての結果を決める為に、患者は最高の技術を持つ眼科外科医に手術を依頼することが、眼科疾患の治療の全てである。
細川さんなどの凄みはこの情報が実に正確であることである。深作眼科が世界最高の技術と設備、実績を持つ眼科施設であることを熟知していて、完全に治療を任せたことである。近年の患者は非常に怖がりになっている。この眼の手術を受けることは怖いであろうから、最近は基本的に手術中は眠らせるようにしている。しかし、細川さんは全く怖がっている感じがなかった。後でお尋ねすると、完全に信頼していたので、全く恐怖感は無かったとのことであった。普段はこんな穏やかな人はいないと感じ入るのであるが、手術中の冷静沈着振りは、全く豪胆な武家の頭領の血を受け継いでいる方だと感じた。
細川さんは私が白内障手術を施行し、多焦点レンズを移植した。多焦点レンズは、外から来る物からの反射の光を分ける性質がある。単純に言えば、遠くと近くからの両方の光に焦点が合うように作られている。この焦点の合った光が眼の網膜に届き、電気信号に変換されて脳に伝わる。脳の後ろの部分でその電気信号を過去の記憶と照合しながら認識し、物が何であるかを知る。これが物を見るという行為である。細川さんは常に遠くと近くの物からの光情報に焦点が合うために、遠くと近くの物をいつもピントが合った状態で見えている。この情報から必要な情報を脳が選んで今は遠くを見ている、とか今は近くを見ているとかを意識することとなる。人間の目はあくまでも光を電気信号にかえる受容器と変換機でしかない。見るのはあくまでも脳である。最近注目される3D立体テレビであるが、あれは右の目の受容器からの電気情報と左目からの光の電気情報とを別々に与えて、その電気情報を脳に伝え、脳が過去の情報と比較解釈して、テレビ画面が立体的であると解釈するのである。つまり脳が見ることの主体であることの身近な例である。
大切なのは、この多焦点レンズを移植したならば、遠くと近くが見えるようになるのかとの一般論である。単純に言おう。決め手は手術の腕である。通常の白内障の方法では、多焦点レンズ手術後に、むしろ近くも遠くも見えなくなる恐れが多く、実際に他院で手術を受けた多焦点レンズ移植後の患者で、視力が著しく悪い患者が助けを求めて来院する例が増えた。ゲーテの取材でも簡単に述べたが、白内障手術のレベルが超上級者のレベルでなくては良い結果は出ない。CCCとよぶカプセルの窓だが、完全に正円で、ど真ん中に、しかもレンズにわずかに辺縁が架かる直径5.5ミリの正円窓のCCCを作らなくてはならない。白内障手術の終了直前のカプセルの裏面に、薄く残る皮質のかすを完全に取り除き、クリーニングをしなくてはならない。これは完全に上級者のみができることである。他院での多くの手術では、カプセルのクリーニングが不完全である。もうぴかぴかに磨かなくてはならない。もちろん、その他の小切開とか洗練された超音波白内障手術とかは当たり前のことではある。多焦点レンズの度数の誤差はなくさなくてはならない。また乱視もほとんどなくす。もしも、必要なら手術後に残った乱視は、LASIKで完全に除去できる。
このような経過を経て、細川さんのように手術後に裸眼で1.5という視力が得られる。細川さんは遠くも近くも完璧に見えるのである。深作眼科では普通の世界であるが、これは全て完璧な白内障手術の技術によって得られる成果である。現実には日本の他院で、有名な病院でも多焦点レンズを移植して、手術後の視力が悪くて、深作眼科に助けを求めに来る人が後を絶たない。多焦点レンズ手術に必要な高度な技術には、従来の単焦点レンズ手術でよい視力を得られるレベルの手術では不足である。本当に良い視力を得たいのならば、実績数10万件を超え、多焦点レンズの使用例が、世界的に見ても、もちろん日本では例外的に多い、深作眼科で手術を受けるべきである。初めから深作眼科で多焦点レンズ白内障手術を受けた方々がいかに喜んでいるか、また他院で既に手術を終了してあり早く、深作眼科を早く知りたかったと非常な落胆振りを示す患者のいかに未だに多いことか。私はできるだけ多くの人に最高の視力を取り戻し、幸せな人生を手助けしたいと思う。一人でも多くの方が、細川さんのような賢明な選択をされんことを切に祈っている。


最近、深作眼科の一階に画廊を開いた。人気プロ画家の企画展を連続して開いている。今回は著名な佐々木豊さんの個展を開催している。大作を多く含め、30数点を出されている。小品は画廊専用のスペースで、大作はロビーとレストラン伽羅などを使い展示している。今日はギャラリートークとパーティーを行った。
基本的には患者さんとその家族に美を堪能してほしいと設営したが、今日はとくに美術のみを目的に来館された方が多かった。数百人で各会場はごった返していたが、どの顔も佐々木豊さんの魅力溢れる各年代の、傑作を見ながら喜んでいただけたようだ。


大作が多い中で、ひとつ面白い作品がある。『二束の草鞋、ドクターF』だ。これは佐々木豊さんの説明で知ったが、ヌードを描きたいので、設定は産婦人科医が診察している傍らで絵筆を振るっているが、どうやら『ドクターF』とは僕のことであるそうだ。いずれ、僕の画業を自らの個展で世に問いたいと思う。絵画でも眼科外科医と同様に、日本人で初めての世界最高の境地にたどり着きたい、とは願っていて、努力をしたい。

佐々木豊さんのファンと同時に、多くの著名な画家もパーティーにいらした。佐々木さんの左は僕も会員である日本美術家連盟の理事長で、二紀会理事長、芸術院会員でもある山本貞さんだ。他にも入江観さんとか多くの芸術家、また日本一の画廊主の吉井長三さん、日動画廊など多くの画廊関係者などがいらした。佐々木豊人気とともに、最近元気が無い日本の文化活動に活を入れるべく、新しい美の発信地が誕生したことを喜んでいただけたようだ。
ぜひ一人でも多くの方々が、深作眼科で視力を取り戻し、またその良い視力で1階の画廊を訪ね、まずは美しい美術を鑑賞することで、心の栄養を得ていただきたいものである。